社長がメモ帳で日報管理——その月末、何時間かかっていますか?
毎日メモ帳に日報を書く社長の話
ある建設系の中小企業での話です。
その会社では、社員が現場から戻ると、社長が一人ひとりの作業内容を聞き取り、メモ帳に日報として記入していました。毎日です。
それだけなら「まあ、そういう会社もあるよね」で済むかもしれません。問題はその先でした。
月末になると、社長はそのメモ帳を1か月分めくりながら、社員ごとの稼働日数を集計し、給与計算を行う。さらに、現場ごとにかかった人件費や経費をExcelに打ち込んで、利益率を計算する。
この一連の作業を、社長がひとりで、毎月やっていました。
「月末は本当に憂うつでね」
そう話す社長の表情は、冗談ではありませんでした。
月末に「まとめて計算」が危ない理由
「月末にまとめてやればいい」は、一見すると合理的に見えます。でも実際には、3つのリスクを抱えています。
1つ目は、単純にミスが出ること。 メモ帳の走り書きを1か月分まとめて転記するわけですから、読み間違い、計算間違い、入力漏れは避けられません。しかもそれが給与に直結する。間違いが許されない作業を、一番ミスが起きやすい方法でやっている状態です。
2つ目は、社長の時間が奪われること。 月末の数日間、社長は事務作業にかかりきりになる。その間、現場の判断や営業は後回し。社員からの相談にも「今ちょっと手が離せない」と返すことになる。
3つ目が一番怖い。社長が倒れたら、誰もできないこと。 メモ帳の書き方、Excelの計算式、給与の計算ルール。すべてが社長の頭の中にしかない。もし社長が体調を崩したら、その月の給与計算は止まります。
これは「効率が悪い」という話ではなく、会社の運営が一人の人間に依存しているという話です。
日報・給与・経費——全部つながっている
この会社の業務を整理してみると、あることに気づきます。
社長が毎日やっていた「日報の記入」、月末にやっていた「給与計算」、そしてExcelで管理していた「現場ごとの経費計算」。バラバラの作業に見えますが、実は1本のデータの流れでつながっています。
日報に「誰が、どの現場で、何時間働いたか」が記録される。その情報があれば、給与計算に必要な稼働日数・残業時間が出る。さらに、現場ごとに人件費を振り分ければ、少なくとも「どの現場にいくら人件費がかかっているか」は見えるようになる。
つまり、入口の日報さえちゃんとデータ化されていれば、人件費の集計と配分は自動的に計算できるわけです。
メモ帳に書いてExcelに転記して電卓で検算して——とやっていたのは、同じ情報を形を変えて何度も手入力していただけだった。そこに気づいた時、社長は「なんでもっと早く相談しなかったんだろう」とつぶやいていました。
システム化で変わったこと
この会社では、日報の入力から給与計算、現場ごとの経費計算までを一つの仕組みにまとめました。
変わったことは3つあります。
まず、日報の入力が社長の手を離れました。社員がスマホから直接入力できるようにしたことで、社長が聞き取ってメモ帳に書く作業がなくなった。毎日30分以上かかっていた作業がゼロです。
次に、月末の給与計算が大幅に楽になりました。日報データがそのまま集計されるので、社員ごとの稼働日数や残業時間を手で数える必要がない。社長がやることは、最終確認だけです。
そして、現場ごとの人件費がリアルタイムで見えるようになった。 これは想定以上の効果でした。以前はExcelで月末に計算していたので、「あの現場、人件費がこんなにかかってたのか」と気づくのが翌月。今は現場が動いている最中に数字が見える。材料費や外注費は別途管理が必要ですが、人件費だけでも「見える化」されたことで、判断のスピードがまるで変わりました。
社長が月末に憂うつな顔をすることは、もうありません。
「社長にしかできない仕事」に時間を使う
この事例で一番大きかったのは、時間の削減でも経費の可視化でもなく、社長の時間の使い方が変わったことです。
日報の聞き取り、給与計算、人件費の集計。これらは大事な業務ですが、社長にしかできない仕事ではありません。仕組みに任せられる仕事です。
一方で、現場に足を運んで状況を見る、取引先と関係を築く、社員と話して空気を読む。これは社長にしかできない。
月末の事務作業に追われている時間は、本来こっちに使うべき時間です。
もし「毎月の事務作業に追われて、本当にやるべきことに手が回っていない」と感じているなら、それは能力の問題ではなく仕組みの問題です。
ITに詳しくなくても大丈夫です。「月末の給与計算が大変で」「日報の管理を楽にしたくて」——それくらいの言葉で、詳しい人に相談してみてください。
まとめ:今日やること
この記事を読んで、「うちも似たようなことやってるな」と思ったなら、今日やることは1つだけ。
今月、社長自身が手を動かした事務作業を3つだけ書き出してみてください。
その3つの中に、仕組みに任せられるものがきっとあります。